設立の目的


1995年の阪神・淡路大震災で神戸のケミカルシューズ業界が壊滅的な被害に遭いました。西成においても、皮革関連産業は中小零細企業が多く、脆弱な経済基盤で営まれている現状があります。震災の教訓をふまえて、早急に産業・生活の基盤整備をはかっていく立場で運動を進めてきました。一方、ガット・ウルグアイ・ラウンドによる関税自由化の嵐は、いやおうなく靴業界をはじめとする皮革関連業界にも大きな影響を及ぼしています。皮革の自由化で海外生産品が増え、優れた技術者の確保も難しくなってくると、靴職人の高齢化とともに若手職人の不足もいっそう深刻になり、「このままでは靴の職人技術が消えてしまう」ことが懸念されるようになりました。

 ところが近年、これまでのブランド志向よりも個性的で履き心地のよい靴の人気が注目を集めるようになり、自分の手で靴を作りたいと思う人が若者を中心に増えてきました。そこで「今こそ、伝統ある職人技術を伝える靴の学校を!」と、職人たちと地元の有志が力を合わせて設立したのが、わが西成製靴塾です。

 本校では、現役の靴職人がその熟練の技術を、生徒一人ひとりに寄り添いながら伝えています。靴づくりの技術を学ぼうとする新しい感性との出会いを積み重ね、いつまでも西成の靴職人の技が継承されていくことが、本校を設立したわれわれのねがいです。


① 地元産業である製靴業の技術(主に手縫い)の継承、啓発活動の一環と して産業振興を目指す。

② 社会教育の観点から、地元産業を中心に地域の歴史を学ぶ場を提供し、  広く西成という街の姿を知ってもらう。

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