靴の職人を育てる学校
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卒業生インタビュー:s.scrofa 冨田 貴昭さん 卒業生インタビュー:s.scrofa 冨田 貴昭さん

取材・撮影:2017年(『靴職人の手仕事展』展示資料より)

中国での生産現場

ー靴をつくりはじめたきっかけは?

元々は販売をしていて、そのときから靴は好きだったんですね。そのあとに靴の商社に勤めて、その会社では中国で作ったものを輸入し、お客さんに納品するOEM(original equipment manufacturer)というのを8年間ずっとやってきたんです。中国では工員をこき使って、いかに安く作って、いかに数多くのオーダーをもらうかっていうモノづくり。モノづくりじゃないですよね。一生続ける仕事じゃないと思って、「自分で作ってみようかな」と。それで退職して、最初は独学で作っていましたが、やっぱり簡単な靴しか作れない。奈良の靴教室にも行ったんですけど、セメント(圧着)ばかりで、どうせやるんやったら手縫いを勉強したいので、西成製靴塾に。

ー中国での生産はすごく違和感ありましたか。

そうですね、やっぱり見てて申し訳ないな、と。冬に工場に行くと工員のみなさんは凍傷になった手で靴を作ってはるんですよ。一足 1,000 円とか 2,000 円とかで作ってもらう。まぁ、お金を稼げるのはそっちのほうですけど、ずっと続ける仕事じゃないとも、そんなモノづくりは絶対続かないとも思いましたね。

西成生まれのイノシシ

s.scrofaの靴たち01

ーお店やブランドのコンセプトを教えてください。

せっかく手縫いでやっているので、手縫いでしかできないデザインをやりたかったんで、爪先をハンマーヘッド・トゥにしました。あとはもう、丈夫でずっと履ける靴というかんじですよね。革も厚いのを使って作って。材料も。

ーこの名前はどういう意味ですか。

ʻs. scrofaʼ(スース・スクローファ)はラテン語でイノシシの学名なんですよ。製靴塾で教えてもらったイノシシの毛針を使い、かつ爪先がイノシシみたいなので。

ーブランド名はこの形を作るのが前提?

結局、このブランドではこの爪先が四角い靴しか作ってないですね。今のところはまだ、この形でいろんなデザインが浮かんでくるので、なんとかなっています。

ーハンマーヘッド・トゥというのは一般的な形なんですか。

ちがいますね。ジョン・ムーアというイギリスのブランドが昔、この形を作っていた。ただ、雰囲気は全然ちがう。海外の靴に憧れたのではなく、後に調べてみたらそういうブランドがあっただけのことです。ぼくはそれを真似たわけでなく、元々、製靴塾で木型を習っているときに、同時進行で「余ったパテでなんか面白い形を作りたいなぁ」って思い付いた形なんですよ。思い付きでパテを盛ってて、この形で靴作ったらどんなかんじになるんやろうなぁと思って、一個作ってみたら、けっこう面白い、と。

ーその当時の木型は残ってますか。

木型はもうないっすね。…あ、これか、これです。これですわ。
当時の木型

ー遊ぶのも悪くない? いい発見でしたね。

そうですね、製靴塾にいるときから卒業してからどんな靴を作ろうかと考えながらやってました。そのときに思い付いたもので、今のところ来ているので。

ー手縫いでしか作れないものの発見が、ブランドを立ち上げるきっかけだというのはおもしろいです。ところで、靴作りは楽しいですか。

楽しいのもありますけど、それ以前に巧くいかなくてイライラしますよね。楽しいのは仕上げのほぼ完成のとき。やっぱり、とくにこのデザインはぼくしかやってないというのがあるんで、続けたいですね。

意外と合わせやすい

ー冨田さんは若い頃からモノづくりは好きだったんですか。

若い頃はじつは絵を描くのが好きでした。それで一回、大阪芸大を受けたんですけど、落ちてしまった。絵と関係するかわからないですけど、服も好きだったんで、最初、洋服の販売の仕事に就いたんです。

ーハンマーヘッド・トゥはどんな服に合いますか。

太いズボンでも細身のパンツでもけっこう合わせやすいと思います。自分でもいろんな恰好に合わせてます。見た目がすごい特徴あるから、みなさん、合うかどうか不安やと思われるんやけど、履いてみたら前がかなり広いので履き心地もよくって「すごく履きやすくて、合わせやすいなぁ」って言っていただけます。ぼくも販売でファッション業界には5~6年携わっていたんで、突飛な靴ではなくてコーディネートしやすい靴というのを考えて企画・デザインしてます。爪先は特殊ですけど、それ以外のデザインは突飛ではない。履きやすさや合わせやすさはつねに考えています。 s.scrofaの靴たち02

靴を売りたい

ーブランドを立ち上げて3年が経ちますね。第一段階は超えたという実感はありますか。

そうですね、正直、ずっと「こんなんで食っていけるのかな」って手探りでやってましたけど、ようやくちょっと見えてきたかなぁ。あの靴だけでは厳しいですけど、教室を開いたり、知り合いからOEMで小物を依頼されたりとか、ちょっとずつ増えてきてるんで。もうちょっと耐えればそろそろ行けるかな。靴のブランドはこのまま続けて、あとは教室や、もっと安い4~5万円で買える靴をやりたい。本当にイベントで売れる靴、出店して売れる靴を作りたいです。出店の声はいただけるようになったんですけど、結局、鞄を並べている。できたら、そこに靴を並べたい。

ーやっぱり靴なんですね?

そうです、そうです。だから、もうちょっと靴には力を入れたいですよね。いろいろ最近は東京とかこの前も金沢で出店しましたし。金沢でもまた出店のオファーをいただいたので、できればそこに靴を並べたいな。それと、教室でもっと楽したいなっていう(笑) s.scrofaの店内
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