靴で地域を編み直す
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卒業生インタビュー:Ippo ippo 赤尾 恵利子さん 卒業生インタビュー:Ippo ippo 赤尾 恵利子さん

取材・撮影:2017年(『靴職人の手仕事展』展示資料より)

Ippo ippoのつくる靴

ーIppo ippoさんでは、どのような靴作りをされているのでしょうか。

靴のベースとなる革の素材の良さを生かしたものを作りたいっていうのがあるので、デザインデザインしたものじゃなくって、その革のツヤであるとか、雰囲気、風合いであるとかが生きる靴を作りたいから、ほんとにもうシンプルなデザインですね。可愛すぎるのも嫌やし、でも尖り過ぎてるのも嫌やし。

ー色々な人に履いていただけそうなデザインですよね。

どんな年代の人にでも受け入れてもらえて、男の人女の人関係なく選んでもらえるデザインをしたい、という思いで始めたっていうのと、主に4万円前後の靴を作りたいというのが最初から頭にあって。自分がそのくらいの価格の靴を履いてたんで、自分が履いてたような靴にプラス「もうちょっとこうしたいのに」とか、既成品よりもちょっとプラス、お客さまのイメージが入るものを作りたいっていうのがあります。

ー流行にも左右されずに、長く履けそうです。

昔、自分が靴難民やったんです。足のサイズがうんぬんじゃなくって、すっごい気に入ったらそればっかり履くんですけど、次のシーズンに行ったら靴屋さんってもうイメージ変わっていて「私は何を履いたらいいの? 履きたいものがどこ見ても無い!」っていう状態やったこともすごいあるんで、そうじゃなくっていつ行っても定番のものがあるお店にしたいっていうのもあるんですよね。あそこに行ったらアレあるよね、っていう。 Ippo ippoの靴たち01

靴との出会いは偶然に

ー靴を仕事にしようと思ったのは、どういった経緯からですか?

きっかけって自分からじゃ別になくって。31歳で前職を辞めて、さぁ次何をしようかっていう候補の中に靴はあったんですけど、その時は私ではなく友人がしたかったんですね、靴。それで時間があるんだったら色々調べてよって言われて、資料請求とかして見てたらどんどん自分がハマっていって。西成製靴塾に見学に行った時に「あ、ここにもう4月から入りたい」って、なぜか自分の心が決まったっていう(笑)靴は元々好きでしたけど、自分が作るっていう点で考えたことはそれまで一回も無かったんで、ほんまにご縁があったんやろうなって。すいません、アツい想いがあったキッカケではなかったんです(笑)

ー前職は何をされていたんですか?

前職は美容の世界で、全然違う仕事なんですよ。でもメイクの仕事なんで、手を使ってする仕事で、自分でデザインというか、イメージをしたものを形にするっていう点では一緒。何か自分の手で作り出す、どんな場所でもできる、一生の仕事になるものを見つけたかったっていうのもあって、辞めたのもあります。

ー始めから自分でお店をしようと思って学校に通っていたんでしょうか?

はい。前職の仕事を辞めた後、友人がカフェをオープンするのを手伝ってたんです。そしたら普通に生活してたら絶対会えないであろう人達と、どんどん出会っていくわけじゃないですか。なんかお店って面白いなって思って。で、なぜか35歳の間にお店をしたいっていうのだけは漠然と決まっていて、学校に行きました。卒業後にすぐ、フルオーダーでされている師匠の下で2年半勉強させていただいて、そのあと独立って感じですね。 Ippo ippoの靴たち02

大変をのりこえて

ーお店をはじめて、どうでしたか?

いやぁもう最初の3年は必死のぱっちですけどね(笑)よく言うんですけど、自販機の水にしても何にしてもそうやけど、こんなに高かったっけ? って思うくらいに手を出せない。もう電車になんて乗れない。でもなんかね、過去最高のド貧乏を経験する機会なんで、それはそれですごい楽しかった。うわ、もう貯金何百円〜みたいなのとか(笑)

ーそこで楽しめるポジティブさがスゴいです。

ありがたいことに、周りに結構自営している人が多くって。やっぱりそういう大変な時も乗り越えてうまくいっている人達を見て来てたんで、なんかうまくいかない気はしなかったというか。それに正直ね、もしとことんやるだけやって、それでもあかんかったらその時はすっぱり辞めよう、っていう覚悟も。その後は別にどないしてでも食べていける、っていうのはあったんで不安はなかったです。

ー今お店を始めてどのくらいですか?

7年くらいです。1年目2年目でやってきた点々としていたことが、やっとこう、線になって繋がってきたっていうのを3年目超えたくらいから感じるようになりましたね。何かと大変やなと思う時はありますけど、でもやっぱり自分の好きなことなんで、それを仕事として今やれてるっていうことは、すごい幸せやと思います。
Ippo ippoの靴たち03

これからのippo

ーIppo ippoの由来を教えてください。

よくお客さんの一歩一歩とかって言われるんですけど、そうじゃなくて、ボチボチ自分のペースでやっていけたらなって、一歩ずつ進んでいけたらいいなっていう意味のIppo ippoなんですよ。申し訳ないですけど自分的なことなんですよね(笑)ほんとボチボチマイペースに、焦らず急がず、常に目の前の1足1足を大切にやっていきたいなって。

ーこれからずっと靴を続けていくのでしょうか。

なんかね、さぁいつまでするっていうのは、ふわふわしてた部分があったんですけど。でもここ最近になって、ほんと70歳、80歳になっても、月に1足2足のご注文であっても、ご注文をもらって、続けていきたいっていうのがすごく芽生えてきました。最終目標っていうか。

ーそれは靴作りが楽しいからですか?

楽しいっていうのと、あと、やっぱり靴を作らせていただくお客様が増えたら増えた分、そのお直しを自分の手でしたいっていうのも出てきて。そしたら自分の靴を生み出せば生み出すほど、辞めることはできない(笑)それであれば70歳、80歳まで靴を続けてるおばあちゃんになりたいっていうのが、ここ1年くらいで自分の中で定まったので、迷いも無くなりましたね。70歳、80歳をそう迎えられるように、この40代〜50代をどうしたらいいかなっていうのが今の課題ですね。 Ippo ippoの店内
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