靴で地域を編み直す
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卒業生インタビュー:COCO hand work shoes 望月 智恵さん 卒業生インタビュー:COCO hand work shoes 望月 智恵さん

取材・撮影:2017年(『靴職人の手仕事展』展示資料より)

COCOのつくる靴

ーCOCOの名前の由来はなんですか?

最初は個人個人の「個々」っていうイメージで「COCO」にしました。ひとりずつ足の形が違うので、ひとりずつ、個人個人に合った靴を作りたいっていうイメージで名前をつけています。KじゃなくてCなのは当て字ですけどね。文字にした時に、やっぱり丸い方が可愛いですしね。

ー靴がとってもカラフルですね。

「カラフル」っていうのは最初から思っていました。人と差別化したいなと思って、自分に秀でたものが全く無かったから…デザイン性とかがすごく良ければデザインでやりたいって思うんでしょうけど、私は美大も出てないし芸術センスもないし(笑)でも色って、人それぞれ、好きな色が違うじゃないですか。それがいいなと思って。

ー何色くらいあるんでしょうか?

今は19色から選べます。これも段々増えてきて、レモンと黄色とか、キャメルと茶色とか、「どう違うねん」って感じですけど、やっぱり微妙に違うんですよね。例えばメインの革とパイピングを選べる靴だったら19色×19色の組み合わせになる。この中で全く同じものを選ぶ人ってそういないから、自分と全く同じ靴を見つけられない感じでしょ。そういう特別な自分だけの一点ものっていうのがいいなと。

ーファッションの中心に持って来れそうな色ですね。

みんなやっぱり靴って二番手なんですよね。洋服があっての靴っていうイメージ。でも私は靴を一番に持っていきたいから、洋服は地味目に抑えて靴だけバン!って派手にするとか、この靴履きたいから今日はこの洋服を着ようとか。COCOをそういう靴にしたいな、そうなりたいな、と思ってます。 COCO hand work shoesの靴たち02

望月さんの靴のはじまり

ー靴をはじめたキッカケはどういったことだったんでしょうか。

西成製靴塾に入る前は普通にOLしてたんです。私ずっと体育が得意だったから、手先が器用やとは思ってなかったんですけど、でも革とか靴は好きで、あと木とか。古くて味が出るようなものに凄く魅力を感じていて。靴は特に好きだったんですよ。それも革の、いい靴を大事に履きたい感じで。それで靴を作れるっていうのを知って、友達がこんな学校があるよって製靴塾を教えてくれて。それで調べ出したんです。

ーOLから靴作りは大きな転換ですね。

製靴塾に入る前に、友達が偶然知り合ったおじいさんが家でカバンを作ってた人で、友達と一緒にその人の所に教えてもらいに行ってたんです。それまでジッとして何かを作るとかってしたことがなくて、でもやり出したら楽しいなって思って。それで、作ったものをみんな欲しいって言ってくれて、材料費だけもらって作って。自分が作ったものを「いいね」って言ってもらえるのがすっごい嬉しくって。それで「作る」っていうことが自分の中で盛り上がってたのもあります。

ーカバンではなく、靴に進んだんですね。

カバン作りをする中で、靴も作れるのかな? ってなって。カバンは作り方が想像できるけど、靴って一体どうやって作ってるんだろう…っていう興味が凄くありました。だから最初は趣味というか、自分で靴が作れるってなんか面白そう、っていうので行ってるから、別に独立して…っていうことも全く考えてなかったんです。

ー学校に通う中で、お店を開くことを考えはじめたんですか?

そうですね。製靴塾に通っている1年間は、365日ずっと靴をやってたと思います。家でもパターン引いてたし、習った事を復習したり…それがもう楽しくて仕方なかったんです。そんなにハマったことが今までなかったから。それまでも色んな習い事もしてるんですよ、和裁とか着付けとか、陶芸、金継ぎとか…でもその中でもダントツで靴が楽しかったし、興味があるとすぐ覚えられるんですよね。だからすごく楽しかったですね。それでこれからも靴を続けたいって思いました。 COCO hand work shoesの店内01

お店のこと、これからのこと

ー卒業してすぐにお店を開かれたんですよね。

3月末に卒業して4月4日にオープンしました。それまでに場所の契約して内装のこととか準備して、卒業の途端に始めましたね。最初は2人で始めたんですが、意見の違いや方向性の違いが出てきて、2年目からは1人でやっています。

ー靴を作っていて楽しいところは、どんなところでしょうか。

うちはリピーターの方が多いんですけど、オーダーの靴を作る時にお客さんのことが段々分かってきたんですよ。「この人はこんなのが好きやからこうしてあげよう」とか、「こうやったら喜ぶんじゃないか」とか。そんな風にお任せされることが多いので、それがハマった時、納品の時に「あ、すごいイイやん!」ってなった時は楽しい!それにその人を思い浮かべながら作るっていう作業がすごくいいです。

ー対話が大切になりそうですね。

話をしようと思ってます、たくさん。パッと渡して「ハイ、サヨナラ」とかじゃなくって。私の作りたいものを作るというよりも、お互いに意見を出して、いっぱいいっぱい話をして作っていくのが合ってるんだと思います。だからお客さまもこちらに要求して欲しいなって思うし、私も色んな情報が知りたいし、普段どんな服を着てるか、他には何色を持ってるかとか、そういうことも聞いて、たくさん話をしますね。
COCO hand work shoesの靴たち02

ーお店を開かれて、今どのくらいですか?

2008年に製靴塾に通って2009年に独立して、だから今年で8年なんですけど、なんだか8年目で今すごくいい状態。形になってきたかなと思いますね。8年もやってたらだいぶ上手になってるし、採寸の感覚とかも分かってきた感じですね。

ーこれからやりたいことはありますか?

もうちょっと前の方がすごく野望があったんですけど、全国展開みたいな(笑)でも、大きくして手が及ばないよりも、手が届く範囲でやりたい。自分の手が全部に行き届く規模がたぶん今くらいなんですよ。結局、自分が作るってことはたくさんは作れないし、そのたくさん作れない中の靴を、いかに丁寧に向き合って作っていくかっていうのが、多分自分には向いてたなって思って。だから今はそんな全国区にするとかは考えず西区で細々とやりたいと思います(笑) COCO hand work shoesの店内02
[ shop data ]

COCO hand work shoes

〒550-0004 大阪市西区靭本町1-14-9三輪ビル1F
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URL:http://coco-shoe.com